「まんが!100分 de 名著 アドラーの教え『人生の意味の心理学』を読む」(読了記録)
「まんが!100分 de 名著 アドラーの教え
『人生の意味の心理学』を読む」
前々から気になっていた「アドラー心理学」に関する本を読み終えたのでレビューを投稿します。
書籍概要
監修:岸見 一郎(哲学者) + NHK「100分 de 名著」制作班
脚本:藤田 美菜子
まんが:上地 優歩
出版社:宝島社
(借り本, 読了日:2025年4月17日)
定価:本体1200円+税
オススメ度:☆☆☆
難易度:初心者向け
選定理由
以前から「アドラー心理学」というものには興味がありましたが、中々手にする機会がありませんでした。
そんな最中、職場の尊敬すべき上司と「私はトラウマを抱えやすい」というお話をしたところ、「今の君に必要な本」だろうということで本書を勧められ、蔵書をお貸しいただくこととなりました。
概要
本書では、都内から地方へ異動してきたばかりの電機メーカー営業マン 向井 哲也(30歳)が、異動先の田舎で出会った喫茶店のマスター(45歳)から、会社員人生で生じる対人関係の摩擦について、アドラー心理学の観点から解説を受ける、というストーリーをマンガ形式で仕立てています。
以下に、各章のタイトルと私の心に残ったフレーズをご紹介します。
第1章 人生を変える「逆転の発想」
- 「アドラー心理学」とは何か?
- 過去の経験は、自分の生を決定しない
- 「ライフスタイル」を変えれば、人生は変えられる
第1章、物語は主人公が喫茶店「アゴラ」に立ち寄った際に、そこでアルバイトをしている大学生がマスターにファミレスのウェイトレスに対する愚痴を盛大にこぼしているシーンから始まります。
*ちなみに店名の「アゴラ」とは古代ギリシアにおいて市民たちが哲学や政治などをの話題を論じるための公共広場であると解説があります。
ここで最も衝撃的を受けた考え方が「人の行動は『目的』ありきで『原因』は後づけ」という「目的論」という考え方でした。
ストーリーの中でアルバイトの大学生はマスターから、「大声を出してウェイトレスを困らせ言うことをきかせたかった」(目的)。
そのために「怒りという感情を『捏造した』(手段)のでは?」とたしなめられているシーンがあります。
確かに、心当たりがあります。
職場にもいつも強い口調で私に接してくる人がいるけど、背景としてはそうすることで私を従順にさせること、自身を尊敬させることが目的なのかなぁと思いました。
第2章 自分を苦しめているものの正体
- 劣等感は、人類の進歩の原動力
- 生きづらさの原因になる「劣等/優越 コンプレックス」
- 競争する相手は他者ではなく自分である
この章でも心当たりが。
先日とある飲み会でひたすら同僚の悪口を言っている方がいました。
終いには「あいつが俺に勝っているのなんて学歴と~と」と言い始める始末。
まさにこれが、「優越コンプレックス」が他者の価値を貶めることで自分を上に置こうと期待する「価値低減傾向」の一例なのでしょう。
最後に挙げられている「競争する相手は他者ではなく自分である」というのはまさにその通り。
自身の価値を推し量る際には本来「他者」というパラメーターは存在しないはずなんです。
ただし、私が思うにこれは理想郷でのお話。
私達が生きる現代社会では多くの場合「相対評価」が採用され、私達は限られた席・資源などを巡って競争することを強いられており、実はその競争思考というのは学校というところへ通い順位付けをされるようになった頃から既に私達の中に植え付けられていた社会の仕組みであると。
だから、アドラーの主張自体は理想的には確かにその通りではあるものの、人間の生物としての根本的な本能を理解し社会の仕組み自体を変えない限り実現は難しいのでは?というのが私のここでの素直な感想です。
第3章 対人関係を転換する
- すべての悩みは対人関係の悩みである
- なぜ、他者を「敵」だと感じてしまうのか?
- 対人関係は「課題の分離」で考える
この章では引きこもりの息子を抱えた御婦人が登場するのですが、喫茶店のマスターは、この引きこもり問題について「それは息子の課題」であると、バッサリ御婦人に告げています。
幼少期に大事に育てられた人は「他者が自分に何を与えてくれるのか」にしか興味を示さず、承認欲求が満たされないと憤怒するようになるなどという話も書かれていますが、「人を変えることはできない」、「人の課題に土足で踏み込む事はできない」というのがこの章のメインテーマであるように感じます。
人は誰しも他者の人生を代わりに生きてあげることなどできないのですね。
第4章「自分」と「他者」を勇気づける
- 人間の幸福のカギを握る「共同体感覚」
- すべては「自己受容」から始まる
- 「自分の価値」を確認する方法
この章での気付きは、「人を褒める」ということは「叱る」ことと同様に「能力のある人が、能力のない人に下す評価」であり、必然的に相手を下に見ていることになるということです。
この解決策・代替案として提示されていることが「ありがとう」と感謝を伝えることです。
「ありがとう」という言葉は上から目線の「評価」ではなく純粋に相手の貢献に着目し、それを伝える事ができる言葉であり、ありがとうを言い合える関係こそ「対等な横の関係」であると本書では解説されています。
まとめ
ということで、改めて私の感想を率直に述べるとすると、アドラーの主張は理想的なものではあるが、現代社会においてその理想を現実のものとするのは難しいのでは?ということです。
最終章で解説されている「共同体感覚」というのが欠如している人がいるからこそ、人を出し抜いて自分だけ上に上がろうとしたり、戦争が起きたりする、とのことです。
一方で、我々が人間である以前に生物であることを考慮すると、その根本には各個体が自身の遺伝子をより多く残そうという「利己的な遺伝子」という考え方を私は支持しています。
そのため、理想を言えばそうなんだけれど、みんなが同じ環境で育ちみんなが同じ環境に置かれているわけではないんだから、競争が生まれるのも自然なことだし、それをなくすには全人類が精神的に成熟していることが求められるのでは?というのが私の率直な感想です。
アドラー心理学は少し私には早かったかな?
というか私にとっては私以外に勧めたい人が思い浮かぶ一冊でした。
構成自体は、殆どの部分が漫画のストーリー形式になっているので、活字に抵抗があるかたにもとっつきやすい一冊だと思います。
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